頸部痛、上背部痛に関する論文紹介
Journal of Manipulative and Physiological TherapeuticsVol. 35, Feb. 2012
Cerebral Perfusion in Patients with Chronic Neck and Upper Back Pain:
Preliminary Observations
(慢性頚部痛・上背部痛患者における脳潅流に関する検討)
Maxim A. Bakhtadze, MD, PhD, Howard Vernon, DC, PhD, Anatoliy V. Karalkin, MD, PhD,
Sergey P. Pasha, MD, PhD, Igor O. Tomashevskiy, MD, PhD, and David Soave, MSc
要旨
目的:頚部痛患者における脳潅流レベル、Neck Disability Index (NDI)スコア、脊椎関節Fixation間、相関の有無を検討する。
方法:45人(内女29人)の実験時慢性頚部・上背部痛患者をNDIスコアにより分類した(mild, moderate, severe)。頸椎、上部胸椎椎間関節、肋椎関節Fixation部位数、Visual Analogue Scale (VAS)による疼痛レベル、Single-Photon Emission Tomography (SPECT)を使用した局所脳血流を調べた。SPECTでは半定量的解析を行った。それぞれのNDIグループの総SPECTスコアにおける分散分析を実施した(P<.05)。Fixation、疼痛、とSPECTスコア間および年齢と罹患機関との間の一側変量(univariate)相関解析を実施し、その後多変量解析を行った。
結果:14人の患者がグループ1 (mild)に分類され、SPECTによる脳潅流は8部位全てで全員正常であった。グループ2 (moderate)では16人が分類され、頭頂部、前頭部に潅流低下がみられた(20-35%)。グループ3 (severe)には15人が分類され、グループ2同様、頭頂部、前頭部に顕著な潅流低下がみられた(30-45%)。グループ2,3においてグループ1と比較し、有意な潅流低下が観察された。Fixation部位数とSPECTスコア間において相関が検出された(r=0.47, P=.001)。多変量解析では、NDIスコアがSPECTスコア分散に39%起因していることが検出された。
結論:本研究の頚部痛・上背部痛患者において、NDIスコアが脳潅流低下を推測するための指標となる可能性が示唆された。脊椎関節機能不全(Fixation)は局所交感神経系活性化と関連する可能性が示唆された。
Key index term:Neck pain; Disability; Evaluation; Chiropractic; Tomography, Emission computed, Single photon;
Brain
感想:
この研究は、カナダのカイロプラクティック大学とロシアの大学病院との共同研究かと思われます。病理的要因が未解明な慢性頚部痛(肩凝り)に関する脳画像研究は非常に少なく、数える程度しかありません。今回このような論文が掲載されたことは大変すばらしいことであり、今後の私たちの研究にも参考になると考えます。将来このような腰痛や頚部痛など筋骨格疾患に関する研究が増えることを期待します。
小倉 毅
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